概要
性器カンジダ症は真菌の一種であるカンジダ属によって起こる性器の感染症である、と性感染症学会では定義づけています。
女子は主に膣炎・外陰炎となり、これらは合併するので外陰膣カンジダ症と呼ばれます。
男子では比較的稀な疾患ですが、もしなってしまったら、亀頭包皮炎という形をとります。
約1~2週の治療で85~95%の症例が治癒しますが、少数例では再発を繰り返します。
原因菌として、Candida albicansが最も多く、次いでCandida glabrataが多い。
特徴
基本的にこの疾患はほぼ女子専用といえます。
単にカンジダを保有しているだけではカンジダ症とはいえません。
膣内カンジダの保有率は
・非妊婦で約15%⇒このうち治療が必要なのはその約35%
・妊婦で約30%⇒このうち治療が必要なのはその約15~30%
結果、カンジダ症の要治療率は
・全非妊婦の5%
・全妊婦の4.5~9%
と、結構な数に及んでいます。
外来でよく見られる一番多いパターンは…
抗生剤を何日か服用しました。ちょっと経ってから陰部が痒くなってきました。酒粕のような白~黄色のおりものが出てきました。 ものすごく痒くなって掻きむしりました。今度はしみるような痛みも加わってきました。当院にやって来ました。
こういう感じなのですが、実際には治療したにもかかわらず何度か繰り返す場合が多くて、
『カンジダは治らないからぁ。』
といって半ばあきらめというか開き直り状態に陥っている患者さんもいます。
でも決してそういうわけではありません。
きちんと診断と治療が行われれば完治する疾患なのです。
症状
女子の症状
外陰部や膣が痒い
痒いどころではなくて灼熱感
さらにそれどころではなくて痛い
時に性交痛や排尿痛もあり
おりものの増加
おりものの性状は酒粕状・粥状・チーズ状・ヨーグルト状となる
おりもののにおいが臭いと言う人はあまりいない
男子の症状
包皮の内側や亀頭から垢のようなカスが出る
痒みはあってもわずかで、むしろ痛みを訴える方が優勢
患部が赤くなったり、水疱ができたり
SEX・マスターベーション等、包皮を刺激すると切れたり、縦に亀裂が入ったりする
診断
症状が分かったところで今度は診断ですが、方法は2つあります。
おりものをプレパラートにとって顕微鏡でみる⇒胞子・菌糸体を見つける
おりものを培養してカンジダを検出する
私も昔は患者さんが来ると片っ端から鏡検していましたが、最近では忙しさにかまけてあまりやらなくなってしまいました。(すみません。。)なので、私的には、おりものの培養検査がこのカンジダ症の確定診断法なのです。
でも、言い訳する訳ではありませんが、医者になって20年経過した現在の私のレベルでは、おりものを診た瞬間に、だいたいどんな菌種が検出されるかが分かってしまいます。
なので、私にとっての『おりもの培養』とは、自分のインプレッションの正確さを検証する方法でもあるのです。
一方、男子の亀頭包皮炎の原因菌を探る時は、見た目でもある程度判断はつきますが、女子ほどにインプレッションと培養結果が一致しません。
これは、男子性器では患者さん自身がいじり易いために、来院時すでに患部に様々な修飾が加えられている為だと理解しています。
治療
さあ今度は治療となりますが、正しくカンジダと診断がつけば治療は容易です。
■治療(正論)
・外陰部・ペニスの病変に対してはイミダゾール系の抗真菌剤の塗布(1日2~3回)
・来院していただき、膣内を洗浄後、イミダゾール系の膣座薬を挿入(5~6回)
・他の細菌による二次感染が認められる時には、その治療も併用する
・急性期の性交は避ける(当たり前だがやれば悪化します)
■誘因の検索と除去(治療より大事かも。。)
・抗生剤の服用
・細胞性免疫の低下(ウイルス感染・抗がん剤使用など)
・ステロイド剤(内服・外用)の使用
・コントロールされていない糖尿病
・ピルの使用
・妊娠(出産時赤ちゃんへの感染注意)
・膣の自己洗浄(洗浄剤使用)
・性交(全症例の5%は行為によるものとされる)
・包茎
■それでもカンジダを繰り返す場合
・Candida glabrataの感染を疑う⇒使用薬剤を変える
・腸管内カンジダの存在⇒内服抗真菌剤による除菌
・試しにパートナーも一緒に治療してみる(念のため程度)
・HIVも疑ってみる
・残っていたものが再増殖したのか?新しい感染か?
このような事も考える必要があります。
まとめ
以上、カンジダ症を解説してみましたが、おわかりいただけましたでしょうか?
我々人類は、普通の生活であっても、カビに囲まれて生きています。
その証拠に、置いてあったはパンは、知らぬ間にカビてきますし、足にはよく水虫ができます。
カンジダもそのカビの一種ですし、何も特別なものではありません。
ただし、罹患部位がいかんともしがたい場所のため、ヒトはカンジダと対峙するのでしょう。