Fさん♂は彼女に促されるようにして私の外来にやってきた。

「彼女が膣のおりものが変なので、医者に診て貰ったら、クラミジアと言われたらしいんです。
自分は症状がないんですが、はやく病院に行って来いって言われて。」
とのこと。

さらによく聞けば、治療はもちろんのこと、きちんと診断をつけてもらって来いとの指令が出ているらしい。

Fさんは少し憤っていた。
何だか自分が悪者にされているような気がしていたからだ。
できれば私に「クラミジアじゃないよ。」
と言ってほしいみたいだった。

でも、もし、本当にそんな結果(♀が陽性で♂が陰性)がでたら、
どうするつもりなのだろう?
そのほうが2人の間に波風は立つのに。。。

ただ、そういうことも実際の臨床の場ではたびたび起こっている。
そういった事があると、私はその度、かなり詳細な病歴と服薬歴を男女双方からとって、いつも2人の相互不信の解消に向けて最大限の努力をしているのだが、どうしようもなく説明のつかない場合もある。

実際、片方から、「実は、浮気してました。」と打ち明けられることもある。

今回の結果は尿中クラミジア抗原が陽性だった。尿の培養からは、B群溶連菌が検出された。

今回のFさんの場合は、全く矛盾点のない結果といえるだろう。

私は、アジスロマイシン1000mgの1回投与を選択し、2週間はSEXを控える
ように。と指示を出した。
彼女の方も治療を開始したばかりというので、ちょうどいいタイミングだった。よかった。

帰り際に彼が言った。
「ところで、先生。このクラミジアっていうのは、どっちがどっちにうつしたんですか?」

そんなこと聞くなよ。判るわけないじゃん!!

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