Jさん♀は、2人のお子さんの出産経験のある方で、
数日前から増してくる、激しい下腹部痛にて当院を受診した。

当初、内科的な疾患も考えたが、腸管が初発であるものだとは、どうも
考えられなかった。次に、婦人科的な診察をしてみると、膣の中にある
分泌物の量がおびただしく多いのに気付いた。
それはもちろん、子宮頚管から出ている分泌物で、子宮体部に激しい
圧痛と子宮頸部を動かした時に生じる移動痛を認め、それはまるで、
腹膜刺激症状だった。

明らかにPID(骨盤内炎症性疾患)だった。当然、抗生剤による治療が
必要になってくるが、場合によっては入院が必要になることもある。

本症例もそう考えてもよい症例だったので、高次医療機関に連絡をとり、
ベッドの確保をしてから、Jさんを送り出した。

向こうでは、すぐに抗生剤の点滴を開始したが、分泌物中の細菌が
同定されたら、こちらから連絡することになった。

次の日、急ぎの細菌培養同定の結果がでた。
Jさんを苦しめたその細菌は、A群溶連菌だった。

後日、退院した彼女から詳しく聞くと、症状が出始める数日前に、
お子さんが、溶連菌感染症になっていたそうだ。

おそるべし、溶連菌。子供ばかりでなく大人まで。

感染経路の詳細はわからないが、その御家庭における、夫婦間の
性行為が、最終的な菌の移入につながったことは間違いあるまい。

しかも、妻の方にPIDを起こさせ、病院送りにするとは。。。。

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