Kさん♀は24歳になったばかりであるが、膣のカンジダ症においては、すでにベテランの域に達している。

最初に当クリニックを訪れたのは、もう、5年も前のことだ。前の医者で診てもらった、膣炎が、治ることなく、何度も再発することに、弱り果てての、来院だった。

彼女を診察した際、膣の分泌物は一見して、カンジダとわかる、典型的な、チーズのコマギレ状のカスカス(理解してもらえるだろうか?)であった。一応、培養検体はとったものの、治療は、やはり、膣内を洗浄してから、抗真菌剤の膣錠を挿入するといった、従来の方法でいくしかなかった。僕は、「もしかして、前に診た先生は、洗浄を連続してやらなかったのかも。」と、かってに決め付けて、1週間連続洗浄で、この患者さんを治そう、と思った。(日曜はお休みですけど。)

彼女は、「今回こそ、きっちり治してやる。」という意気込みが、ひしひしと伝わってくるほど、真面目に通院してきた。
そのかいあってか、6回目には、おりものはほとんどなくなり、かつ、膣壁の赤みもない。外陰の皮膚は、限りなくノーマル。というところまできていた。
また、初診時にとった、膣分泌物培養からは、やはり、カンジダ属の真菌のみが検出された。
(アルビカンスかグラブラータの区別はできず。これってカンジダの種類なんだけど、イタメシの名前みたいね。カタカナで書くと。)

「あと1回で終了ですよ。」ぼくが言うと、彼女は、「本当に治ったのでしょうか?」と、疑心暗鬼。
そんなふうに言われると、僕の方も、困ってしまい、
「治ったとは思うんですけど、治療を終了してから、しばらく様子を見ないと、何とも言えませんからね。」と、苦しい答えになってしまった。

最後の1回である、7回目の洗浄が終わり、「これから、次回の月経後まで、通院はお休みしましょう。」と言うと、こんどは彼女が、「せっかく、こんないい状態になったのに、休んだら、元に戻っちゃうかもしんないから、通ってていいですか?」とのこと。
僕は、一抹の不安を抱きながらも、「だいじょーぶ。僕を信じて。次の月経後まで、待ちましょう。」と、かっこよく言い切ってしまった。言わなきゃいいものを。。。

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