「今日はどうしましたか?」私はたずねた。
「私は自分が梅毒だと思うのです。」と彼。
彼が言うには、彼が今のSEXパートナーと知り合ったのは、ホモ・セクシャルの人のみが集う場所だとのこと。
そういう専門の場所があるらしい。そして、いざ、そのパートナーとのSEXという段階で、相手の性器にブツブツがあるのに気付いたというのだ。
その瞬間は、まずいと思ったのだが、その場の雰囲気と性欲に負けて、その相手を受け入れてしまったというのだ。
その後も何度か2人は情事に及んだのだが、Gさんはとうとう怖くなって、当院にやって来たのだ。
血液検査の結果は、ガラス板法、TPHA、FTA-ABSとも強陽性だった。
こういう経緯と検査結果から考えれば、梅毒(1期)の診断は間違えることはないのだが、問題は、治療とデータ正常化までのフォローである。
梅毒は病原体であるスピロヘータを直接培養することができない。
これは、薬剤耐性を知ることができないこと、治療の効果判定を定期的な血液検査にたよるしかないことを意味する。
つまり、ペニシリンGを使ってみた→しばらくして検査→数字が動かない→ほかの薬を使う→また検査・・・・・・
こんな感じで、試行錯誤と呼ぶのが適切であろうやり方になってしまうのだ。
このGさんの場合、ABPC(ペニシリン系)を1日1500mgで4週間内服することにした。効果判定は内服後1ヶ月経ってから行うことに。
薬を飲み終えて1ヵ月後、彼は外来にやってきた。
血液検査をしてみると、ガラス板法による値が低下してきたものの、8倍以下にはならなかった。ただ、これ以上の内服は必要のないことを説明し、2ヵ月後にどれくらい数値が下がるかをみてみよう、ということになった。
以来、彼が来院することはなかった。
再び同じ場所に行っているのだろうか?
HIV感染はどうなのだろうか?
自身のしている行為が危険ということは彼はわかっているはず。
何らかの対策を持っていてくれればいいのだが。。。。