さて、前回の続きです。
米国のHIV/エイズの患者数は、その後、増加の一途をたどります。
1987年に、5万人
1992年に、25万人
2000年には、とうとう70万人を超えました。
HIVはアフリカ起源であり、ハイチがアフリカと米国の中継地であった
ことから、ハイチを経由して全米に拡がっていきました。
また、血友病患者の出血に用いる第8因子製剤は、米国において、
多数の売血を1つのロットに集めてから、製造され、全世界に供給
されました。これにより、1960年代のB型肝炎と同様に、HIVは、
全世界の血友病患者に拡がって行きました。
さらに、男性同性愛者(MSM)と静脈注射薬常用者(IVDU)は、
古くから差別の対象であったため、そこからの感染を抑制することは、
問題と障害が多かったのです。
というのも、直腸上皮は、通常の皮膚や、膣、口腔などの上皮
(重層扁平上皮といいます)とは異なり、薄い構造(単層円柱上皮)を
しているため、MSMの肛門性交は、病原体の伝達効率が高いと
されています。その上、MSMのSEXには、妊娠や金銭といった、
性行動に抑制的に働く因子がないために、欧米のMSMには、年間の
パートナー数が100人以上などというケースも存在するのです。
ただし、1980年代後半から、リスクグループのカウンセリングが
行われた結果、米国MSMの直腸淋菌感染者数は10分の1以下に
激減しました。
これにより、1995年には、欧米のHIV新規感染者数は、ようやく
減少に転じてきました。
また、1995年以後に行われている、HAART療法は、感染者の
死亡率を激減させてきましたが、時間が経つにつれ、感染効率の低い、
膣性交による、女子の感染が増加し、異性間のSEXが、4つのHに
加え、5つ目の危険因子となったのです。
最後になりますが、HIV/エイズはパート1でお話しした通り、8:2と
男性に多い疾患です。ところが、アフリカ、インドなどでは、男女比が
1:1となっています。この理由は、梅毒、淋病など、HIV以外の
性感染症の高い罹患率が、男女共に、HIVの伝達率を増加させる
ためと、説明されています。
確かに、日本でのHIV/エイズの報告数は、これまで、世界最少ではあります。
しかし、同時に、開発国中で唯一の報告数増加国であることを、私達は、決して忘れてはならないのです。
いかがでしたでしたでしょうか?この2回のお話を読んでいただければ、
HIV/エイズに対する今までの認識が、より鮮明になっていくはずです。
皆さんにそうなっていただくことが、このサイトの何よりの願いなのです。
前回同様、小島先生、ありがとうございました。