体がだるい(性感染症の症状として)

ずいぶん漠然とした自覚症状なのですが、
この症状は、例えば、このサイトで扱っている性感染症以外でも、
実に様々な疾患により、起こりうるものだ思います。

ただここでは、
性感染症領域の中でも、ウィルス感染症に焦点をしぼって、お話ししたいと思います。

では、まず、なぜウィルス性疾患なのかということなのですが、
ウィルスである病原体が、性行為を介して、人体に進入した時、
ほとんどの場合は、人間の免疫システムのうち、細胞性免疫を刺激します。

ウィルスが人体で細胞内に入り、増殖を繰り返し、この細胞性免疫を
賦活化させると、人体にはそれが炎症として認識されます。
一連の免疫活動は、感染部位から拡がりを見せ、ストッパーが
かからなければ、ほぼ、全身に拡がるといってもいいでしょう。
ただ、実際には、感染部位の付近にある所属リンパ節が、ストッパーとなる場合が多いようです。
そして、それが、具体的にいえば、発熱、頭痛、全身倦怠感(だるさ)、リンパ節の腫脹(はれ)として、
人体に認識されるのです。

では、実際に、性感染症のなかで、今回のタイトルにもなっている
「だるさ」をきたすものは、一体どれだと思いますか?

もちろん、疾患それぞれの特徴というのがありますが、
実際の臨床の現場で、圧倒的に、だるさを訴えてくる疾患としては、
性器ヘルペスが、あげられます。しかも、この性器ヘルペスという疾患は、
初発した場合には、ほぼ全例、ソケイ部のリンパ節が、腫れてきます。
これに対し、再発を繰り返しているものでは、だるさも、リンパ節の
症状も、ありません。

次に、臨床的に、頻度は低いのですが、HIVがあげられます。
HIVの場合においては、感染してから2~4週間たったところで、
20~50%の感染者に、急性症状といわれる、ウィルス感染が
成立した時にみられる、非特異的な反応が出現するといわれて
います。その後、1~2ヶ月して、HIV抗体が出現すると、多くの場合、
ウィルス量は、低下します。(もちろん、治ったわけではありません。)
さらに、感染から、数ヶ月から数年したところで、CD4陽性のT細胞の
数が、200個/μLを切ると、AIDS(後天性免疫不全症候群)に至る
とされています。AIDSの症状としては、持続性の全身リンパ節腫脹、
発熱、下痢、口腔カンジダ症があり、まさに、「体がだるい」という、
状態になります。

さらに、最近の知見で、アデノウィルスが、オーラルセックスにより、
NGU(非淋菌性尿道炎)を起こす、というのがあり、(トピックス参照)
この、アデノウィルスも、感染した際には、前の2つの疾患と同じような、
非特異的な、急性のウィルス感染の兆候を示します。

最後に、B型・C型の肝炎なども「だるさ」という点からはリストアップ
きるでしょう。ただ、肝炎については、慢性型の経過をとるものより、
感染して1ヶ月以内におこる、急激な、肝機能低下の方が、「だるさ」
を引き起こしてしまうようです。肝炎の際に、患者さんが訴える、
だるさは、大体、こんな言葉で表現されます。
「だるくて、だるくて、体の置き場がない。」
「だるすぎて、寝れない。」

どうでしたか?「体がだるい」という症状一つでも、いろいろなことが
考えられました。ただし、ウィルス感染は、感染機会があってから、
数週間後でないと、抗体が陽転しないために、検査ができません。
つまり肝心なのは、うつらない事、これに尽きるのです。

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