赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)はヒトに
病原性を持つ腸管寄生性原虫の代表的存在である。
実は、ヒトに感染する赤痢アメーバは2種類ある。
一つは病原性を持つ、E.histolyticaで、全体の10%、
もう一つは病原性を持たない、E.disperで、90%を占める。
世界でこの赤痢アメーバの病原種に感染している人口は
総人口の約1%にも及ぶと言われており、その多くは、
発展途上国に集中する。
さて、わが国でのアメーバ赤痢の現状であるが、この疾患は、
男性同性愛者間の性感染症としてとらえられている。
米国でも以前から、この疾患が流行しているとの報告があったが、
米国のそれは、非病原種であることが多いのに対し、わが国のものは、
その多くが病原種であるため、
アメーバ性大腸炎やアメーバ性肝膿瘍
などの症候性症例として、臨床の現場に姿を現す。
性感染症としての感染様式は、肛門と口が直接接触する糞口感染。
非性感染症としての感染はE.histolyticaの嚢子に汚染されたものを
経口摂取することによって成立する。
治療法は抗原虫薬であるメトロニダゾールの投与である。