昨日、HIV(ヒト免疫不全ウィルス)についてのニュースが配信されました。
HIVは、1983年フランスにて、患者のリンパ節より初めて分離された
ウィルスであり、1986年には、HIVと類似してはいるが、血清学的に
型の異なるウィルスが、西アフリカのエイズ患者より分離されました。
前者をHIV-1、後者をHIV-2として、一応、区別はしていますが、生物学的・ウィルス学的性質は、ほぼ同じであるといえます。
ただ、HIV-1の方は、感染性、病原性とも強いとされ、
一方のHIV-2は、アフリカに生息する、サルの免疫不全ウィルス
(SIV)と、ほとんど変わらない、とされてきました。
しかも、このHIVは、数十年ほど前から、独立的に複数回、
チンパンジーからヒトに入り込んだとされ、長い間、孤立したアフリカの
地域にのみ存在していたのですが、1970年代になって、先進国に
持ち込まれたと言われています。以後、発達した人的交流によって、
全世界に流行するようになったのは、みなさんがご存知の通りです。
今回のニュースは、以上の事柄を、遺伝子学的な手法を用いて、
証明できた、というニュースなのです。
【ワシントン=増満浩志】世界的に流行しているエイズウイルス(HIV)
は、アフリカのカメルーン南東部に生息するチンパンジーから人間へ
感染した可能性の高いことを、欧米とカメルーンの研究チームが
初めて突き止めた。
各地のチンパンジーが保有しているウイルスを比較して分かった。
治療薬やワクチン開発につながる成果と期待される。
米科学誌サイエンス電子版に25日、掲載される。
HIVの起源は、チンパンジーに感染するサル免疫不全ウイルス(SIV)
といわれていた。研究チームは、カメルーン国内の10か所で
チンパンジーのふんを採取。5か所のふんからSIVの遺伝子を検出した。
分析の結果、遺伝子の構造(塩基配列)には地域差があり、
同国南東部の2か所で検出されたSIVが、世界的に流行している
HIV(Mタイプ)と酷似していた。
(読売新聞) – 5月26日3時6分更新
いかがでしょうか?遺伝子学的な手法は、人類の起源が、アフリカ
にあることばかりでなく、その人類を滅ぼしかねないウィルスの起源
もアフリカにあったということことを、我々に物語ってくれているのです。